歯ならびの拡大について-1-

最近、歯列の側方拡大の賛否がネット上で話題になっているようです。


正歯科専門の歯科医は必要に応じて、歯列の側方拡大を行います。小児歯科などでも行われています。

 

まず、側方拡大は上顎(上あご)と下顎(下あご)の歯列によって意味合いが若干異なります。
上顎の側方拡大は大きく2つの方法が存在します。
急速拡大による上顎骨(上あごの骨)および歯列の拡大と緩徐拡大による歯列のみの拡大です。
中間型に分類されるクワッドヘリックスなどの固定式装置による拡大も存在します。
急速拡大は、装置は固定式で急速に拡大を行います。
上顎骨には顎の骨の真ん中に正中口蓋縫合と言われる骨の継ぎ目があります。10代中頃までであればこの継ぎ目を使って、骨から上顎を広げることが出来るのです。矯正装置の矯正力を用いるだけで、手術などの観血的処置は必要ありません。成人でも拡大が可能なアンカースクリュー(観血的処置が必要)を応用した装置も開発されています。
緩徐拡大はゆっくりと歯列だけを拡大します。
プレート式の脱着できる装置(写真の装置)が用いられることが多いです。
緩徐拡大では骨は拡がらないので、歯槽骨の限界を判断して拡大をする必要があります。
問題とされている歯列拡大は、骨の限界を考慮するか、考慮しないかにあると考えます。
当たり前のことですが、骨のないところまで歯を拡大すれば、歯根(歯の根)が飛び出してしまいます。
矯正歯科治療では『下顎が王様』と言われています。
下顎は歯列の拡大がしにくく、横方向への整直(アップライト)がほとんどの効果を占めます。
上顎のように骨から拡げることのできる縫合もありません。
上顎は下顎に比べて自由度が高く、下顎は上顎に比べて拡大などの治療の選択肢が少ないので、上顎を下顎に合わせることしかできないと言う意味なのです。
歯列の側方拡大では上下顎骨の限界(特に下顎)を考慮しながら、上顎を下顎に合わせて拡げることが必要とされます。
歯を抜きたくないという気持ちから、上顎の叢生(乱杭)を解消することだけを目標に無理に拡げてしまうと、広げすぎて骨から歯根が飛び出したり、下顎の歯列とまったく合わない、調和のない歯列を作ってしまい、逆に噛めなくなることがあるのです。
次回は歯列拡大の実際の治療についてご説明したいと思います。